2020.2.17

2020年4月から相続税のルールが追加されます!(配偶者居住権/概要)

2020年4月から相続税のルールが追加されます!(配偶者居住権/概要)

今回の記事は「相続税」に関する内容です。
2019年9月17日に「相続税に関するルールが変わります」という内容の記事を投稿しました。民法のう、相続について規定した部分を「相続法」と言いますが、平成30年の民法の改正は単なる相続法の改正にとどまらず、これに関連する相続税実務にも大きく影響を及ぼします。
今回はその中でも特に影響が大きそうな「配偶者居住権」について記事を書いていこうと思います。ボリュームが多くなるそうなので月に1度(おおむね月の中頃の予定)のペースで複数回に分けて紹介していこうと思います。今回は概要編です。少し長くなりますが、魅力的な制度になる可能性もあるのでぜひご覧ください。

配偶者居住権とは、被相続人が所有していた家屋等に配偶者が居住していた場合には、その家屋を配偶者以外の相続人(例えば長男)が相続したとしても、配偶者居住権を設定すれば配偶者はその家屋に終身まで無償で住み続けることができるというものです。

例えば被相続人(父)と配偶者、長男という家族があったとします。配偶者と長男の仲が良ければ、長男が相続により家屋やその土地を取得(所有権を取得)したとしても、配偶者に対してその家に引き続き住ませることを許すでしょう。ただ、仮に配偶者と長男の仲が良くなかったとします。そうすると長男が相続により家屋やその土地を取得したとしたら、配偶者は元々住んでいた家から追い出されてしまう可能性があります。
それでは、親子の仲が良くないなら配偶者が元々住んでいた家屋や土地を相続すれば問題は無いのでは?とお考えになるかもしれませんが、相続により家屋や土地を取得することで、その分の金融資産(被相続人の預金等)は他の相続人(今回の家族構成だと長男)に分割されることが考えられます。もちろん、居住する場所は大切ですが、今後の生活資金にもなるであろう金融資産も大切です。さらに土地と家屋の評価額の合計が5,000万円で金融資産が1,000万円だとします。相続人が配偶者と長男である場合、法定相続分は1/2です。そうなると金融資産を1/2にして不動産を1/2づつ共有名義で取得することも考えられますが、仲が良くない親子が共有で取得することも難しいかもしれません。配偶者が5,000万円分の不動産を取得して、長男が1,000万円の金融資産を取得することも可能ではありますが、長男は納得しないかもしれません。配偶者もこの場合、不動産は取得できますが、金融資産は0円なので今後の生活が苦しくなるかもしれません。

そこで配偶者の居住及び老後の生活の安定を図ることを目的として配偶者の生存中は居住建物に無償で居住できる権利(配偶者居住権)が創設されたのです。配偶者居住権が創設されたことで、配偶者は元々住んでいた家に継続して居住(=居住地の安定を図る)でき、金融資産も改正前の民法に比べて確保(=老後の生活の安定を図る)できると考えられます。そのためにどうするかというと、(家屋と土地)の評価(価値の算定)に少し工夫が入ります。簡単にいうとこの家の評価を2つに分割します。家には所有権という大元の権利が存在しますが、これを分割します。具体的には、価値を算定する際、「居住する分の価値」と「居住する分の価値以外の価値」に家の評価を分割します。このうち、「居住する分の価値」を配偶者居住権と呼び、配偶者が取得することで継続して住んでいた家に住むことができます。もう一つの「居住する分の価値以外の価値」は長男が取得します。
ここまで来ると、確かに配偶者にはメリットがありそうだけど、長男はどんなメリットがあるのだろとお考えになるかもしれません。ここで関わるのが配偶者居住権についての相続税の関係です。長男が被相続人の家(家屋と土地)を取得するとします。改正前までは、家を取得した場合、家の価値全てが課税の対象で金額も大きくなる可能性があるため、家を取得した長男が多額の税額を払うことも考えられました。その代わりに、長男は不動産の所有権を取得できますし、二次相続の場合の負担は少なくなります。今回の配偶者居住権の創設については、配偶者が取得する「居住する分の価値」=「配偶者居住権」は相続税の課税の対象として取り扱われることになります。長男が家を取得した場合(所有権という大元の権利を取得)従来の評価については、家全体に係る金額が課税の対象になりましたが、改正後は、形式的に所有権を取得したとしても実質的には「居住する分の価値以外の価値」だけを取得したと考えるので、家全体の価値から配偶者居住権の価値が減額されることになります。配偶者居住権の創設により、長男としては、所有権も取得できますし、二次相続の負担も減りつつ、今回の相続においても課税対象の金額が減額されることになります。今回の相続で長男の相続税の負担が減りますが、その分は配偶者が負担します。(課税の対象である配偶者居住権を配偶者が取得するため)ただし、配偶者には配偶者控除と呼ばれる税額軽減制度が存在しますので相続税の負担が無い可能性が高いです。さらに配偶者居住権は、配偶者が亡くなった場合、その権利が消滅します。権利が消滅して、配偶者の相続の時は課税の対象にはなりません。「居住する分の価値」が配偶者の死亡により、大元の所有権を有する長男に移転するイメージになります。このとき、長男は「居住する分の価値」=「配偶者居住権」を取得することになりますが、先に述べた通りこの配偶者居住権は配偶者の相続の時は課税の対象になりません。つまり無料でその権利がもらえるイメージになります。配偶者居住権の利用により節税の効果が見られます。ここまで来ると長男にもメリットがあることが分かるかと思います。

もう一度はじめの家族構成、金額構成に戻ります。被相続人・配偶者・長男で不動産5,000万、金融資産1,000万が前提です。長男が不動産の「所有権」を取得します。不動産を評価した結果、配偶者居住権に係る分が5,000万のうち2,500万で残りの価値が2,500万だとします。そうすると、長男は5,000万―2,500万=2,500万の「居住する分の価値以外の価値」と所有権を取得します。配偶者はというと配偶者居住権に係る2,500万円の「居住する分の価値」を取得でき、元々住んでいた家に居住し続けることができます。さらに金融資産についても長男のこれまでの相続分が2,500万円、配偶者の相続分が2,500万円と同じですので半額の500万円ずつに分割することになります。配偶者は居住地を確保しつつ、金融資産ももらうことができ、長男は金融資産の今回の受取は少なくなるものの、所有権を取得でき、相続税の負担を少なく(節税)することができます。

仲が良くなければという話だったのですが、仲の良い家族でもこの配偶者居住権という権利は使うべき制度になります。

今回の記事の内容は以上です。
今回は配偶者居住権についての概要に触れていきました。来月中ごろの記事も配偶者居住権についての記事を投稿する予定です。